教員紹介

人間環境学部教員コラム vol.139

2014.01.16 現代コミュニケーション学科 岸 正尚

甲午(きのえうま)の歳に

今年の干支(えと)である「(うま)」を詠み込んだ歌を『万葉集』の中から一首取り上げる。

新川郡(にひかはのこほり)延槻川(はひつきがは)を渡りし時作れる歌一首
立山(たちやま)の雪し()らしも延槻の川の渡り瀬(あぶみ)()かすも
〔⑰四〇二四〕
【現代語訳】立山の雪が解けだしたらしい。水量の増した延槻川の渡り瀬を、鐙を水に浸して渡ることよ。

 

 

富山県東部、新川郡を流れる延槻川(現早月川)は、その源流部の立山の雪解け水を集めて逆巻いている。「たちやま」とは神の霊威が地の底から突き出し山を形成したことを名に負っている山だ。北陸は高山が海岸線に迫った地形で、必然的に川の長さは短く高低差が激しく流れが速い。
越中の守であった三十三歳の家持は、鐙に足をかけ馬を御しその立山の雪解け水が激しく逆巻く流れに乗り入れていく。川の向こうに家持はどんな景を見据えていたのであろうか。この歌には高く響く水の音や張りつめた空気までもが漲っている。
甲午(きのえうま)の今年、越中の荒涼たる原野に馬を進めた家持の気概にあやかり、己が置かれた環境がいかに厳しくとも、果敢に乗り切る覇気を失いたくない。

 

 

岸 正尚(現代コミュニケーション学科)

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